第一回「恋人が去って行った本当の理由」東郷白蓮先生
小百合さん(31才・会社員)からご依頼を受けました。ひどく取り乱している様子から、結婚を約束していた恋人が突然去ったことが霊視できます。彼は理由も告げずにただ「オレのことは忘れてくれ」と言って連絡を絶ったのでした。アパートも引っ越し、携帯の電話番号もメールアドレスも変え、しかも会社まで退職しているのです。徹底した去り方に、私は相当深い理由があると察知しました。
そこで、小百合さんにも聴いてもらうため、彼の魂を降霊したのです。
「小百合、許してくれ。オレは今でも君を愛している。でも、オレでは君を幸せにできないんだ」
しぼり出すような彼の言葉に、小百合さんは「なぜ?どうして?」を繰り返します。しかし、彼はなかなか本心を打ち明けようとしません。固く閉ざされた彼の心に私は念を送り、正直に告白するよう伝えました。
「オレが両親を早くに亡くし、兄貴が親代わりに育ててくれたことは知っているだろう。その兄貴が飲み屋で酔っ払いに絡まれてケンカになったんだ。殴り合いになり、兄貴が殴ったら相手はテーブルの角に頭をぶつけ、大ケガをしてしまった。先に手を出したのも相手の方だ。でも、オレはそんなヤツの弟だ。オレと結婚したら、小百合や将来生まれてくる子供まで後ろ指を指される。そんなことさせられるか!?オレは誰よりも小百合の幸せを願っているのに!」 そこで彼は声を殺して泣きました。
私の頬を熱い涙が伝ってきます。 小百合さんは想像もしていなかった衝撃の事実に絶句。しかし、しばらくして口を開きました。「私は貴方とならどんな苦労でもできる。どんな障害でも乗り越えられる。私を幸せにしたいと思うなら、私と一緒にいて。共に人生を歩んで」彼の霊が深く感動を受けたのを、私はこの身で感じました。
「小百合…本当にいいのか?社会でいろんな差別を受けるぞ。将来生まれてくる子供にまで重荷を背負わせることになるんだぞ」彼の声は震えていました。対照的に小百合さんはきっぱりと「いいのよ。私たちの子供は偏見や差別に負けないよう、強い子に育てましょう」「ありがとう…ありがとう。小百合!」彼のその叫びには小百合さんへの深い愛と彼女を幸せにするんだという気合いが込められていたのです。
そうして降霊は終わりました。行方をくらましていた彼がすぐ小百合さんに会いに行き、強く抱き締め合う姿が霊視できました。愛する女性を不幸にしたくないと、あえて去って行った彼。彼とならどんな苦労も乗り越えると宣言した小百合さん。二人の魂からの愛の叫びは、いつまでも私の脳裏に残りました。