鑑定実例No.06
「行方不明から10年。帰らぬ人となって戻った息子の真実が知りたい」
秋田佳江さん(仮名)・58歳・広島県福山市・主婦
今回の実例は「私の育て方が悪かったんです…」という、深く傷心した女性の、悲痛に満ちた一言から始まりました。詳しくお話を聞いていくと、3年前、10年もの間行方不明だった息子さんが見つかったのですが、すでに帰らぬ人となっており、どんな理由で息子さんがいなくなり、10年間どこで何をしていたのかがわからず、途方に暮れているとのことでした。失踪する前の息子さんは優秀な大学を卒業され、大企業に勤め始めたところだったそうです。息子さんは不慮の事故で亡くなったようで、警察から連絡が来て住居に行ってみたところ、とても質素な暮らしをされており、仕事や交友関係など、それまでどうしてきたのかがほとんどわからない状態。悩む秋田さんの、どうしても息子の口から真実を聞きたいという要望にお応えして口寄せを行いました。
息子さんの霊が降霊、しかしすぐに霊が離れようとする。
[霊能者]
<意識を集中させ目的の人物を探す。しばらくして少し呻くような低い声を出し、その後、自分の体に探していた霊魂を降ろすことに成功>
…あ、ぁ…う、ん<それまで揺れていた霊能者の背筋が伸び、様子が変わる>
[秋田]
…淳一、淳一…あなたなの?
[霊能者]
……母さん…。
[秋田]
本当に、淳一なの?もうしそうなら昔飼っていた猫の名前を教えて!
[霊能者]
…もーちゃん…体に牛柄の模様があって、それが目印だって言って母さんがつけた。
[秋田]
うぅっ<感極まったような声が一瞬聞こえる>淳一なのね…ぅぅっ。
[霊能者]
母さん、落ち着いて…。
[秋田]
淳一、どうして突然いなくなったの?!お母さん、ずっとあなたを探したのよ。なのにどんなに探しても見つからなくて、見つかった時にはもう手遅れで…。
[霊能者]
うっ!<霊が抵抗を示し、体から出て行こうとする。それをなんとかなだめ繋げとめる>
[秋田]
ど、どうしたの?
[霊能者]
ごめん、母さん…あまり話したくない…。
[秋田]
<息を飲む音>淳一ごめんなさい…お母さんがあなたを厳しく育てすぎたから…嫌になったのよね…。あなたがいなくなってから随分後悔したの。小さなころからずっと勉強ばかりさせて、あなたがしたいって言ったことを全然させなかったって。
[霊能者]
……母さんのせいじゃないよ。
失踪した理由を探る。息子さんの思いとは…
[秋田]
じゃあどうして…どうして突然いなくなったの?
[霊能者]……失恋したんだよ。学生時代からずっと好きだった子にフラれて、なんか自分の人生って何なんだろうって考え始めたら、どこか誰も知らないところに行きたくなって……。
[秋田]
失恋…。
[霊能者]
それがきっかけで、全部がむなしくなった。誰かに逆らったこともなく、周りの大人に敷かれたレールの上を走って、いわゆるエリートコースを進んでいることが。
[秋田]
淳一、やっぱりお父さんとお母さんが悪かったのね…ごめんね…あなたにつらい思いをさせて。
[霊能者]
母さん…違うよ。僕はその時初めて気づいたんだよ。僕のしたいことが、今していることじゃないって。だから誰も知らない遠いところへ行って、本当の自分を探そうと思った。もう二度と、父さんと母さんには会わないつもりで。
[秋田]
二度と会わないだなんて、どうしてそんなことを思ったの?
[霊能者]
…二人には受け入れられないと思ったんだ。息子が自分たちの思い描く人生を送らないことを。
[秋田]
そんなことない!
[霊能者]
今だからそう思えるんだよ。僕が失踪する前に会社を辞めるだなんて言ったら、父さん母さんは絶対に認めないし、許さなかったはずだよ。
[秋田]
……。
息子さんからの頼み。意外な真実が明らかに
[霊能者]
大丈夫?母さん。
[秋田]
え、ええ。大丈夫。
[霊能者]
実は母さんに頼みがあるんだ。こんな機会でもなければ伝えられなかったし…。
[秋田]
頼み?どんなこと?お母さん、10年あなたが何をしていたのか知りたいのよ。
[霊能者]
……僕には子どもがいる。
[秋田]
…!子ども?!あなたの?!
[霊能者]
一時付き合っていた人がいて、その人が産んでくれた。
[秋田]
……そう、なの。
[霊能者]
僕は何もしなくていい、一人で育てるからって別れたんだけど…一緒になればよかったってすごく後悔してるんだ。
[秋田]
その人はどこにいるの?どんな人なの?
[霊能者]
すごくいい人で、一緒にいてとても楽しかった。僕を支えてくれたよ。今は××にいて、<親子に関する詳細が語られる>だから、その人と子どもを助けてあげてほしい。
[秋田]
もちろんよ。あなたの子どもなら、私の孫でもあるんだから。
[霊能者]
その子には、自由に生きてほしいと思ってる。僕の分まで。
[秋田]
うっ、ぅぅっ。<しばらく嗚咽する声が聞こえてくる>
10年間の真相。そして別れ
[秋田]
淳一、あなたは10年の間、いったい何をしていたの?
[霊能者]
これと言ったことはしていなかったよ。その日その日で生きている感じで…でも、色んな人によくしてもらって、人の優しさを知ることができた。人が他人に対してあんなに優しくなれるなんて、驚きだった。だから僕も、人には優しくするようにした。そうしたらね母さん。毎日が満たされるんだ。
[秋田]
淳一…。
[霊能者]
母さん、ごめん…。
[秋田]
あなたが謝ることなんてないわ。
[霊能者]
でも僕は、自分で決めたこととはいえとても親不孝なことをした。
[秋田]
……違うわ。あなたは昔から優しい子だったからそう思ってしまうんだろうけど、これはお母さんとお父さんのせいよ。私たちがもっとあなたのことを理解できていれば…違っていたのかもしれない。
[霊能者]
母さん…僕は、幸せだったと思う。父さんと母さんといた時も、そのあと一人で生きた時間も。
[秋田]
それを聞けてよかった。淳一がつらい10年を送っていたらと思うと…それが一番気がかりだったのよ。
[霊能者]
じゃあもう僕は行くよ。あの子のこと、頼むね。
[秋田]
わかったわ。任せて、淳一。
[霊能者]
<体が揺れ始め、低いうなり声が一瞬上がるが、すぐに霊能者自身が目覚め、鑑定が終了した>
その後の経過
相談者本人の談
この度は鑑定いただきありがとうございました。最初は半信半疑だったのですが、もう二度と話すことはできないと思っていた息子と話すことができ、本当に嬉しかったです。空白の10年間の話を息子から聞くことができ、どこかほんの少しほっとしました。そしてあれから、降霊中に息子が語っていた孫の行方を捜しましたところ、息子の教えてくれた場所で、確かに親子二人で暮らしていました。いきなり会いに行って驚かせるのも…と思い、まずは私一人でこっそり見に行ったのですが、孫の母である優美さん(仮名)にすぐ見つかり、淳一の母であることがバレてしまいました。優美さん曰く、私と淳一はとても似ているそうで、優美さんはそんな私のことをあたたかくもてなしてくれました。孫と優美さんと一緒に過ごして、淳一が優美さんに惹かれた理由がよくわかりました。援助をと言うと断られ、今度はおじいちゃんと一緒に遊びに来てくださいね、と笑顔で言われました。
淳一には大変申し訳ないことをしたと思っています。その後悔が消える日はこの先もないと思いますが、淳一がどんな風に考え、どんな人生を歩んだのか、降霊を通して知ることができたのは、私の心のとても大きな支えとなっています。優美さんにも教えてもらいながら、これからもっと生前の淳一の歩んだ道を知っていこうと思っています。そしてあの子の願い通りに、孫が自由に生きられるよう、サポートしていきたいです。本当にありがとうございました。
口寄せ鑑定再録 霊魂との対話 / 鑑定実例No.06