第八話「死産で亡くなった兄に助けられていた」
今回のご相談者さま、群馬県高崎市にお住いの大沼佳菜絵さん(仮名)は、むかしあぶないところを助けてくれた恩人のことがどうにも気になっており、どうにかしてお礼がしたいとご相談のお電話をくださいました。
中学3年生当時、学習塾からの帰宅途中、ひと気のない夜道でワンボックスカーに引き込まれそうになったとのこと。近隣の高校の制服を着た背の高い男子高校生が割って入って助けてくれたそうです。
その後、ショックで泣きじゃくる佳菜絵さんを心配して送ってくれたのですが、一度も家路を尋ねず、知っているかのように家まで到着。別れ際には、「受験で忙しいだろうけど、おばあちゃんがさみしがっているのでたまに電話してあげてね」と、訳知りのように言い残したとのこと。
家族にも〇〇高校のお兄さんに助けてもらったと一部始終を報告したため、お母さまがお礼を言うために高校に連絡をし、該当する生徒を調べてもらったのですが、誰も名乗り出なかったそうです。しかし、わたしにはすぐにわかりました。お話を聞き、脳裏に浮かんだ男性は佳菜絵さんのお兄さまだということが。
わたしがそのことを佳菜絵さんに告げると、たしかに死産した兄がいるとご両親から聞いていると驚かれました。そして口寄せを希望されたので、お兄さまを降し、佳菜絵さんと会話していただきました。
お兄さまは、「お母さんのおなかに宿ったんだけど、お父さんの会社の経営が、急にうまくいかなくなった。ぼくが生まれてしまったら、ますますお金に困ってしまうでしょ? だから、生まれるのをやめて、霊界に帰ることにした。でも、確かに家族の一員だったし、いまもみんなのことが心配で。あのときは、ついに地上に姿を現して助けてしまった」と、お話になられました。
佳菜絵さんはそれを聞いて、電話の向こうで声を上げて泣いておられましたが、「お兄ちゃんだったんだね。助けてくれてありがとう。このことは必ずお父さんとお母さんに伝えるね。お兄ちゃん、いままでわたしはあんまりご供養に関わらなかったけど、これからはちゃんといっしょにするから…」とお答えになられると、お兄さまはたいへん喜んで、霊界に帰って行かれました。
翌日、お母さまともお話することに。お兄さまを妊娠していた際、たしかに出産直前にお父さまの経営する会社が、ライバル会社の登場によって急速に傾いていたそうです。そんなときに死産を経験したため、お母さまは深刻なうつ状態になられたと。しかし、1年半後、大きなビジネスチャンスを得て会社は奇跡的に業績を回復。その後授かったのが佳菜絵さんだったとのこと。
死産した子どもさんはさまざまな理由で霊界に帰っているのですが、いつまでもご家族の一員であり、ご家族を温かく見守り、ときには救助の手を差しのべてくれます。佳菜絵さんのお兄さまは霊界の高い霊層におられ、きょうも佳菜絵さん一家を見守っているのです。