第一話「霊界から届いた亡き彼の声」
「どうしても逢わせてほしい人がいるんです」
こんな一本のお電話が入ったのは、ある深夜。降りしきる雨の音がしとしとと鳴り続けている晩のことでした。お電話をくださったのは、東京都世田谷区にお住まいの睦美さん(仮名・20代女性)。凛としたその声は私の耳に届き、瞬間的に睦美様の容姿や性格、今回のご相談内容が伝わってきました。
睦美さんの相談内容はこうです。睦美さんの元彼Mさんは、ふたりが別れて半年で交通事故に遭い、亡くなってしまいました。ケンカ別れしていましたが、実はふたりともお互いに気持ちを残したままでした。そんな状態で迎えた元彼の死を、睦美さんが冷静に受け止められるはずもありません。「もう一度、彼と話をしたい」そんなご要望だったのです。
私は睦美さんには何もお尋ねすることなく、「では、亡くなったMさんのことを呼び出します。よろしいですね?」と言って、降霊の儀式に入りました。
霊界に旅立ったMさんの霊と交信をはかると、彼もまた人間界に残してきた睦美さんのことが気になり、この世に対する未練を完全には断ち切れていない様子です。私の身体に降りてきたMさんの気持ちは非常に落ち着きがないもので、それと同時に事故当時の痛みも鮮明に伝わってきました。
「睦美、本当はあんな別れ方をしたくはなかった。近いうちに連絡して、あの時のことを謝ろうとしていたんだ。だけどその矢先、事故に遭ってしまって…」
私の口から発せられる言葉は、生前のMさんそっくりの響きだったのでしょう。耳にした途端、睦美さんは泣き崩れました。
「私もMに逢って謝りたいって、ずっと思っていたの。Mは悪くなんかない、私が悪かったの…」
睦美さんが嗚咽のなかやっと絞り出した言葉を、Mさんはやさしく受け止めました。
「いいや、睦美こそ悪くない。俺、あの時どうかしてたんだ。あんな些細なことでケンカするなんて…。だけど今日、睦美があのときのことを怒ってないってわかって気持ちが楽になったよ。ありがとう」
「M…。私こそ、ありがとう」
このあと多くの会話は交わされませんでしたが、おふたりの魂が通じ合ったことを私は感じました。私のなかに温かな気持ちが流れ込んできて、ふたりの魂に残っていた「しこり」が解消されたことがわかったのです。その時まで感じていたMさんの身体の痛みも、それと同時に消えてなくなっていました。事故当時の傷の痛みが消えたということは、つまりは亡くなった時の状況を受け入れ、それを乗り越えられた証拠でもあります。降霊を通して魂の傷は癒され、再び輝きはじめました。これまでおふたりの魂は過去の方を向いていましたが、今日から未来に向けられるようになったのです。Mさんは転生に向けた準備に入り、睦美さんもまた新たな一歩を踏み出しました。
今回のお話のように、降霊を通して魂の傷を修復するのはよくあること。
皆さんの中にも、逢いたいけれど逢えない相手、伝えそびれた言葉のある相手がいる方はいらっしゃらないでしょうか。もし該当するという方は、ぜひ尼子のイタコまでご連絡ください。お相手の生死のいかんを問わず、降霊でお相手を呼び寄せ、会話を実現させます。