改めて知るイタコの口寄せのすごさ
イタコは古くから日本の東北地方などに根付いている、霊媒師、巫女のことです。青森県むつ市の恐山が有名で、現在では「津軽のイタコの習俗」として国の無形民俗文化財に指定されています。イタコは、占いや除霊などの儀式を行うことで、人々の悩みを解決する役割を担う存在でした。時に、その儀式の中では、口寄せと呼ばれる降霊術を行うこともありました。口寄せとは、死者の霊や生き霊を自分の体に降ろして、自らの口から霊の言葉を語り、霊界とこの世をつなぐ橋渡しの役割を果たすものです。そんなイタコの口寄せのすごさと、メリットを解説します。
イタコの口寄せのすごさ
口寄せとは降霊術の一種で、イタコとして長年修行を積んできた者が、亡くなった人の霊、生きている人の霊、神仏などを自らの体に憑依させることをいいます。この霊術には次の3つの特徴を挙げることができます。
- 降ろした霊の口調や話す時の癖がそのまま再現される
- 非常に高い霊力と強い精神力が必要
- 降ろされた霊には一切記憶が残らないため本音で対話ができる
1.については、そもそも霊を降ろしているのですから、当人の癖が現れるのは当然のことなのですが、実際鑑定を受けてみると、霊能者の声色はまったく違うのに、まるで本当に本人がしゃべっているかのように聞こえてくるので、非常に驚きます。このことは同時に、今まさに降ろされている霊は、当人に間違いないという証明にもなります。
2.の高度な霊力を要するというのは、とても重要かつ、危険を伴うことでもあります。もし霊力が弱ければ、降霊できたとしても、霊が体の中から抜けないということもあり得るといわれているのです。それだけ、口寄せがいかに高度な技であり、日々の修練が欠かせない霊術であるかということが分かります。そしてもし鑑定を受けることができれば、それはかなり貴重な経験だといえるでしょう。
3.については、依頼者にとって、とても大きなメリットになることです。相手に記憶が残らないというのはラッキーです。降霊された霊は嘘をつきません。普段聴くことのできない相手の本心を尋ねたり、自分が日頃から口に出せなかったことを吐露することができたりすることは、何よりもありがたいことでしょう。
イタコの口寄せの効果
イタコの口寄せは、もちろん恋愛や仕事、人生相談において非常に有効な霊術です。しかし、最近、イタコの口寄せが社会的に認められたというエピソードがあります。それは、自殺者の遺族のお話です。
自殺者の遺族は、「なぜこんなに近くにいたのに防げなかったのか」という激しい後悔の念にさいなまれます。「一言、なぜ相談してくれなかったのか」とすでに亡くなっている者に尋ねても、答えは二度と返ってきません。そこで、その遺された家族に対してイタコの口寄せを行い、自殺者の霊を降霊して再度対話の機会を設けることが、大きな癒しにつながるというのです。
自殺者は、口寄せで何を語るのでしょうか。もはや亡くなった後は、生前の苦しみや恨み・妬みなどの念がないことが多く、ただ遺族に対して、「お世話になって本当に感謝しているよ」とか「毎朝一本線香を上げてくれるだけで嬉しい」などという健気な言葉を語るそうなのです。
故人はもはや何も望んでおらず、むしろ育ててくれたこと、楽しく過ごすことのできたこの世での時間を感謝しているのです。そのことを知った遺族は、故人の自殺を防げなかったことへの自責の念が和らぎ、前向きに生きることを促されるのです。
このことは、イタコの口寄せにとても大きな効果があり、人々を救うことのできる大変貴重な霊術であることを示しています。