陸奥国の神秘・電話占い
menu
イタコが切る!愛の縁切り実録

第十一話「困った常連客」

仕事の人間関係は非常に難しいもの。大人の抱えるストレスのうち多くが仕事上の人間関係によるものと言います。プライベートであったら絶対に関わらないような相手であっても、仕事であれば関わらざるを得ませんし、それがお客様やお得意先の方であればなおさら邪険にするわけにはいきません。

人間が社会生活を営む上で、仕事の人間関係はどうしても切り離せない側面があり、故にそれによるストレスも決して無くなることがない問題であると言えるでしょう。

先日、客商売のトラブルに関するお問い合わせが入りました。ご相談者様の信明さん(38歳)は繁華街でバーを経営しているマスター。経営は順調で、常連のお客さんも多いそうですが、そのお客さんの中にひとり、少々質の悪い方がいらっしゃいました。

そのお客さんは壮年の男性なのですが、酔うたびに他のお客さんの会話に口をはさんで説教をしたり、若い女性に馴れ馴れしく声をかけたりするのです。どうやら大きな会社の重役の方だそうで、悪気はなさそうなのですが、頑固なところがあり、空気を読んでくれません。

ですが、お店はお客さん同士のコミュニケーション自体を禁止しているわけではありません。むしろ常連客同士が仲良くなってくれれば活性化にも繋がると信明さんは考えています。そして、その男性はべつに喧嘩を仕掛けたり、セクハラをしたりしているわけではないのです。「嫌っている人が多い」というだけの理由で追い出すのは不公平になってしまいます。

しかし、男性が苦手、という声が多くなり、「あの爺さんがいるなら来たくない」と言い出す方まで出てきてしまったので、困り果てていました。そんな時に、電話占いで縁切りを請け負う尼子の霊能者の話を聞き、信明さんは電話鑑定をご依頼されたそうです。

自称「大きな会社の重役」とのことでしたが、霊視をしてみたところ、お話と違う光景が浮かんできました。数十年務めた小さな会社を早期退職した後、奥様とうまく行かなくなり、熟年離婚。現在は独り暮らしをしている姿が見えてきたのです。

お子様はふたりいるようですが、どちらも成人して家を離れており、夜になると寂しさを紛らせるためにバーに通っているご様子でした。他のお客さんに絡んで上から目線の説教をしたり、女性に声をかけたりしてしまうのも、「寂しい」という感情がそうさせているようです。

見えてきた事情をご説明すると、マスターの信明さんは妙に納得したご様子でした。「会社の重役と言ってはいましたが、着ているジャケットは薄汚れていたりしわくちゃだったりしたので、おかしいと思っていたんです。まあ、質素なお金持ちの方もいらっしゃいますので一概には言えませんが…」とのことでした。男性は社会的に孤立しかけていたのです。

縁切りでお店に来なくさせることは簡単でした。しかしそうしてしまった場合、その男性をより孤独に追い込むことになってしまいます。少々考えた末、私はその男性と別の女性の縁を結ぶことにしました。

バーの常連客で、その男性を疎んじる方が多いのは霊視でも明らかでしたが、決して悪い感情を抱いていない方もいました。その中に50代の独身女性がいたのです。見えてきた特徴をいくつか信明さんにお話しすると、「ああその方。いますいます。すごい、ぴったりだ」とのこと。

「確かにあの人は彼に絡まれても決して嫌な感じではなさそうな様子ですね」とおっしゃっていました。彼女もまた孤独感を抱えてバーに通っており、すぐに話しかけてくる男性に仄かな好意を抱いている様子がありました。私は男性を店から遠ざけるのではなく、そのふたりの縁を結ぶことにしたのです。


鑑定の数ヵ月後、マスターの信明さんからご報告のお便りを頂戴しました。なんでも、あれからしばらくして、例の困った壮年男性も、50代の女性も、めっきりお店に来なくなりました。そして、「ふたりが交際を始めたらしい」という話を風の噂で聞いたそうです。

ふたりとも孤独感を癒すためにお店に通っていたので、パートナーとなって以降、お店に足を運ぶ必要がなくなったのでしょう。「常連のお客さんがふたり減ってしまったのは残念ですが、問題が解決してよかったです。ありがとうございました」とおっしゃっていました。

イタコが切る!愛の縁切り実録 / 第十一話「困った常連客」