陸奥国の神秘・電話占い
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イタコが切る!愛の縁切り実録

第九話「実家」

人間関係の問題は主にふたつの解決策があります。ひとつは「折り合いをつけ融和へ導く」というもの。もうひとつは「縁を完全に切る」というものです。多くの諍い事は、前者の方法で融和へ導くことが最善策であると言えます。しかし、どうしても折り合いがつかない相手や、どうしようもなく相性の悪い相手には、後者の方法を取る以外にない場合もあります。

千里さん(48歳)の相談内容は、まさに後者としか言いようのないものでした。千里さんは現在、旦那様と二人のお子さんと一緒に東京で暮らしています。経済的にも環境的にも恵まれ、特に問題のない生活を送っているようです。しかし、千里さんの実家は関西地方にあり、血の繋がった親族は問題のある方ばかり。両親はとっくに離婚しており、実の父親は自殺、母親は借金まみれ、弟は犯罪歴があり、妹は一体何をやって生計を立てているかすらわからない、といった有様です。

そんな親族一同を見ながら育った千里さんは「絶対こんな風にはなりたくない」と常々思っており、高校卒業と同時に逃げるように関東に移り住んで真面目に就職。堅実な旦那様と一緒になり、専業主婦になって以降もこつこつと地道な暮らしをしています。

なお、結婚の際に旦那様に自分の家庭の事情はしっかり説明したとのこと。旦那様はそれを了承した上で「平凡で幸せな家庭にしよう」と言って下さったそうで、千里さんは今でも旦那様に大変感謝しているそうです。

そんな平凡にして平穏な千里さん一家に暗い影が差したのはつい数か月前。縁を切ったはずの母親から突然電話が掛かってきたのです。それを境目に、弟や妹からも連絡が来るようになりました。一体どうやって突き止めたのか、弟が関西からはるばる家にやってきて「お金を貸して欲しい」と無心するようになりました。そんな状況で、千里さんはどんどん精神的に追い詰められていきました。

このままではせっかく手に入れた平穏な暮らしが壊れてしまう。旦那や子供たちに迷惑がかかってしまう。そう思うと不安と恐怖で頭がいっぱいになりました。しかし彼らに対して具体的に取れる手立てがなく、憔悴しきった千里さんは藁にもすがる思いで尼子の霊能者に縁切りを依頼、という状況でした。

鑑定を担当した私はすぐさま霊視を開始し、千里さんの親族縁が異常であることを感じ取りました。ご実家に関わることなので失礼にならないよう配慮しながら、距離を置かれているのではないか、と訊ねると、千里さんはハッとして「その通りです、実家の親族とは関わりたくありません」とおっしゃったのです。そこで私は、見えた内容を赤裸々に話すことにしました。

「幼少期から思春期にかけて家に関わる不運期が集中しています。思春期以降は運気が上昇し、現在もおおむね良い状態です。これはご実家に関わる問題ということでしょう。そして、ここ数ヵ月、途切れたはずの縁がふたたび繋がってしまい、それで困っておいでですね」そう言うと、千里さんは再び大変驚いた様子で「その通りなんです!」と相槌を打たれました。

親族縁を切断するのは並大抵のことではありません。厳密に言うと完全に切ることは不可能です。血の繋がりというのはそれだけ強く、魂同士を結び付けて離さないものなのです。ただ、千里さんのように「どうしても関わりたくない」という場合、縁の繋がりを限りなく薄くし、現実の関わり合いをなくす程度のことはできます。

私は縁切りの祈祷に入りました。まずは千里さんとご実家の親族たちとのつながりを極限まで切り離し、その後、千里さん自身に魔除けの呪文を唱え、神霊の力添えにより悪しき心を持つ者が近寄らない結界を張り巡らしました。

そして、血を分けた親族との縁を完全に切るのは不可能です、と前置きした上で、現実的に接触しない程度に縁を切り離したので、もう大丈夫であることをお伝えしました。千里さんはホッとした様子で、「本当ですか? 本当なら嬉しいです」そうおっしゃっていました。

それから数ヵ月後、千里さんからご報告のお便りを頂戴しました。それによると、実家からの電話はピタリと来なくなり、弟さんがお金を無心しに来ることもなくなったそうです。一体なぜ急に連絡が来なくなったか、理由はわからないそうですが、「もう二度と関わりたくないです。関わってこなければどこで何をしていようと構いません」とのこと。

そして縁切り祈祷の成功に対する感謝とお礼の後、「親族との縁は完全には切れない」とお伝えしたことに触れ、定期的に縁切りをお願いしたいのでよろしくお願いします、と書かれていました。それ以来、数ヵ月から半年に一度のペースで定期的に縁切り祈祷を行い続けています。

人間関係の悩みを抱えて電話占いに相談される方は多く、またその大多数の方の悩みは「わだかまりを解き融和に導く」という方法で解決可能です。実際、相手との縁を切るよりも融和に導き味方に引き入れるほうが遥かに得策であり、私たち霊能者も、できることなら縁切り祈祷をせずに問題を解決したいと思っております。

しかしながら、この千里さんのケースのように、どうしても融和に導くことは不可能で、縁を切る以外の手立てがないケースもございます。皆が分かり合い、手を取り合う世界が来るならそれは理想的ですが、現実はそこまで甘くはありません。どうしても分かり合えない人、どうしても折り合いがつかない人というのは存在します。そういった相手との関係を切り、現実を少しでも生きやすくするために、我々霊能者の縁切り祈祷があるのです。

イタコが切る!愛の縁切り実録 / 第八話「ネットストーカー」