第六話「彼氏の元彼女」
電話占いの相談でもっとも多いのが女性からの恋愛相談。片思いの相手と結ばれたい、別れた恋人と復縁したい、といった内容の悩みが日々寄せられています。当時、新しい彼氏と付き合い始めたばかりだった美佳さん(仮名)も、悩みを抱えて電話占いに相談した方のひとりです。
彼氏とは仲も良く、ふたりの間に大きな問題はまったくありませんでしたが、美佳さんはひとつ彼に大きな不満点を抱えていました。それは元カノの存在です。彼は美佳さんとお付き合いする前、ある女性と5年ほど交際していたそうで、一時は結婚も視野に入れていた仲だとか。しかしふたりは人生観の違いから破局。
それからしばらくして美佳さんとのお付き合いが始まりました。そして、交際が始まってからも、彼はたびたび元カノと連絡を取ったり、食事に行ったりしているのです。
「あいつとは恋愛感情はないし、なんでも知ってる親友みたいなものだから」美佳さんが元カノの存在に不満を告げるたび、彼はそう言って美佳さんをなだめてきます。でも、美佳さんにしてみれば、自分の恋人を自分より知ってる元カノがいて、今でも接点があるという時点で、はらわたが煮えくり返るほどの嫉妬心に苛まれてしまうのです。
しかも、元カノは彼が美佳さんとお付き合いになったことを知って、「あなたは神経質なところがあるから彼女みたいな人と合うかしら…」なんて知った口をきいてくるそうです。別れて以降も彼を自分の所有物のように扱う元カノは美佳さんの立場からしてみたらまるで小姑。親族であれば我慢するべき問題かもしれませんが、彼女はただの元カノなのです。美佳さんは彼の元カノの存在がどうしても許せず、尼子のイタコ霊媒師に縁切りを依頼しました。
イタコ霊能者がまず霊視しましたところ、古い縁が新しい恋をさまたげている様子がはっきりと見て取れました。これは「断捨離」という考え方に通じるもので、古いものがいつまでもそこにあるせいで新しい幸せが流れ込んでくるのを妨害している、という状況です。
元カノとのことは彼にとって良い思い出に違いはありません。そこから学びを得た部分も多く、元カノとの恋愛があるからこそ今の彼が存在しています。しかし、美佳さんとの新しい幸せに向かって歩き始めた今の彼にとって、元カノとの縁はもう「必要ではなくなったもの」と化していたのです。
これは美佳さんのためだけでなく、彼のためでもある。ふたりが幸せになるために元カノとの縁は断ち切らなければならない。そう判断し、イタコ霊能者は秘術の縁切り祈祷を始めました。青森県を中心とする土着の民間信仰で敬われているオシラサマという神を降ろし、その力をもって結縁を邪魔する存在を取り除くのです。
オシラサマは農耕の神とされ、丁重に祀り上げる家に豊穣と安寧をもたらしてくれます。美佳さんと彼を「これから結ばれる家族」とし、元カノを「家族の結縁を妨げるもの」とすることで、神様の力によって元カノとの縁を切ってもらうのです。
祈祷はつつがなく成功。美佳さんと彼の絆はいっそう強まり、元カノとの縁は切り離されました。イタコ霊能者は美佳さんに「この術を使ったことで、ふたりは家族としてオシラサマの加護を受けることになります。ふたりは必ず結婚するでしょう。彼と一緒の人生をしっかりと歩んでいって下さい」と告げ、鑑定は終了しました。
それからすぐ、彼と元カノの関係は一気に切れたそうです。元カノに新しい恋人ができたこと、ふたりの間で些細な行き違いから衝突が生まれたことなどが原因となり、あれほど仲の良かった二人は一ヵ月も経たずにまったく連絡を取らなくなりました。元カノの話をまったくしなくなった彼の様子に、美佳さんはこの上なくせいせいしたそうです。
そして交際開始から半年ほどして結婚話が浮上。お互いの両親との顔合わせも済ませ、現在二人は式場選びの最中とのことです。