陸奥国の神秘・電話占い
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尼子の百物語

第五話「5人に共通する呪いの囁き声」

「助けてください。もうイタコさんしか頼れる人がいないんです…」 声を絞り出すようにしてそう告げてきたのは、東京都は武蔵野市の吉祥寺にお住まいの真希さん(仮名・22歳)。今回、電話占い尼子にイタコの口寄せをご依頼くださったのは、自宅でおかしなことが続いたためだそうです。「何もおっしゃらなくて大丈夫ですよ」とお伝えし、何が起こっているのかを霊視することにしました。私の霊視で見えてきたものはこうです。

真希さんが毎夜、勤務先から帰宅してマンションのドアを開けると、ワーッという雑踏のざわめきのような音が部屋の奥から聞こえてきます。しかし彼女が廊下を通り、寝室の前まで辿りつくと、その音はいつもピタリとやむのです。これが毎日続くのですから、変だと感じない方が不自然です。そのほかにも、ひとりきりで部屋で過していると必ずといっていいほど、低い声で誰かが囁きかけてくるのです。

これは夜に限ったことではなく、休日などに一日自宅で過ごしていると、昼間でも絶えず囁きが聞こえてきます。あまりにも声がくぐもっているため何を言っているのかはよく聞き取れませんが、聞いているうちにひどく気分が悪くなってしまうのです。

最近では外出中もこの声が聞こえてくるため注意力が散漫になり、事故に遭いそうになることも。階段から転げ落ちたり、乗用車にひかれそうになったりといったことが頻発するようになっていました。

ところで真希さんがこの話をSNSで知り合った仲の良い子4人にすると、4人が4人とも同じ体験をしていました。「いくらなんでも、こんな偶然が起こるなんておかしい」と真希さんは違和感を覚えたとか。それで、これはただごとではないと、感じたそうなのです。 この4人が仲良くなったきっかけは、SNSです。みな出身地が同じだったことから知り合いました。

共通の話題も多かったため、4人が仲良くなるのにさほど時間はかからなかったのです。そこは某県にある田舎町。道がきちんと整備されていないため、車で村の奥深くまでは入れないほどの片田舎です。いいえ、違った見方をすれば、よそ者が入って来られないようにわざと道を整備していないのかもしれません。しかし、とにかく4人全員がその場で幼少期を過ごしていた同郷だったのです。

ご友人のことも含めて見えたことを告げると、真希さんは驚いたように目を見開き、「その通りです」と答えました。受話器を持つ手は震え、顔もやや青ざめています。私が癒しの波動を彼女に送ると、わずかながらではありますがその顔に赤みが戻るのが見えました。

私が霊能力で感じたのは、やはり今回の霊障には故郷の因縁が絡んでいるということです。そこで、真希さんに関することだけでなく、範囲を故郷の過去の出来事にまで広げて霊視することにしたのです。

今から数百年は前でしょうか。古びたお堂の前に、たくさんの人が集まっています。クワを持ち、手ぬぐいを巻いている姿から察するに、みなお百姓さんのよう。なかにはモンペ姿の女性もいます。それらの人々がみな一様に恐い顔をして、あるひとりの人物を取り巻いているのです。

「日照りが続くのは、神様が怒っているからだ!」
「これ以上雨が降らなければ、稲が枯れてしまう!」
「米が取れなかったら、俺たち百姓はどうなる!」
「神様の怒りを鎮めるには、生贄が必要だ!」
「どうかわかってくれ!」

みな口ぐちにそんなことを叫んでいます。生贄にされるのは、中央でみなに取り囲まれている女性。うつむいて恐怖で口もきけないでいるその人をみんなで池まで連れていき、呪術者と思われる老婆がなにやら呪文をつぶやいたあと、その女性は池に放り込まれてしまいました。

村人は狂気のトランス状態のなか、わっと歓声をあげて踊りだしました。「これで村は救われる!」と叫ぶ者もいます。池に沈められた女性を気にする者は誰もいません。女性は絶命し、怨念だけがその場に留まりました。しかし、それから数百年の長きに渡り女性の怨念に苦しめられることになるとは、その場にいた村人は誰ひとりとして気づくことはありませんでした。

生贄の効果があったのかどうかは定かではありませんが、その後、その村には雨が降るようになりました。しかし、それから連続して村人は次々と死んでいったのです。病に倒れる者、事故に遭う者、殺害される者、自殺する者…。いずれも、もがき苦しみながらこの世を去っていったのです。それから「この村に住む女性は、村に留まったままでいると22歳になる年に死ぬ」という噂が広がり、その通りになりました。22歳とは、まさしく生贄にされた女性が亡くなった年です。

真希さんもSNSで出逢った友人4人も、みな親から促されて村を出ていますが、そろって今年で22歳になりました。毎夜帰宅すると聞こえてくるざわめきは、あの日狂ったように叫んでいた村人たちの声。そしてこの数ヶ月彼女たちに語りかけてきた声は、生贄にされた女性の呪いの言葉だったのです。

「帰ってこい。村に帰ってこい。まだ罪は償えておらぬ」

真希さんの故郷は、呪われた村。私は霊術で彼女たちを呪いから守るのと同時に、二度と故郷には戻らないようお伝えしました。このような土地にまつわる呪いは、意外と知られていないことが多いもの。ひょっとすると因縁のひとつやふたつ、皆さんの故郷にもあるかもしれません。自分の身を守るためにも、生まれ育った土地や郷里について今一度調べてみてはいかがでしょうか

尼子の百物語 / 第五話「5人に共通する呪いの囁き声」