陸奥国の神秘・電話占い
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尼子の百物語

第三話「子を残した女性がすすり泣く」

「助けてください。このままじゃ子供たちがかわいそう!」叫ぶようにお電話をくださったのは3才の娘を持つTさん。専業主婦のTさんはほぼ毎日近所の公園に娘を連れて行って遊ばせているそう。その公園では毎日10組ほどの親子が集まり、子供たちは砂場や滑り台で遊び、お母さんたちはおしゃべりに花を咲かせているといいます。

しかし、最近ではその公園に異変が起きているというのです。それも、子供にだけ起こる異変が…。

砂場で遊んでいるとき、砂の中から手を引っ張られたと言う子供。滑り台で滑ろうとしているとき、突然誰もいないはずの背後から押されたという子供。最初はふざけて言ってるんだろうとか、気のせいだろうなどと思っていたお母さんたちですが、ほぼ全員の子が同じことを言い出して「怖い、怖い」と泣くのだそうです。

いつしか公園から親子の姿は消え、子供たちは遊び場を失ってしまいました。

霊の仕業だとしたら、午前中に出てくるとは珍しい。何か特別な事情でもあるのだろうか?不審に思いながらTさんにその公園へ行ってもらい、霊視をすると、30代前半とおぼしき女性がすすり泣いているのです。私はこの身にすすり泣く女性の霊を降ろしました。

「健はどこ? 私の息子はどこへ行ったの?」最初に飛び出した発言がこれです。そして、霊の中に張り裂けそうなほど悲しみがつまっているのが感じ取れました。「健、ごめんね。お母さん、先に逝っちゃってごめんね。一緒に遊ぼう。健の好きな滑り台をしようか」

霊が話すのは健君という名の息子のことばかり。私は霊をなだめて話をしてみました。

すると彼女は25年前、当時3才だった健君という名の息子と、この公園でよく一緒に遊んでいました。しかし、ある日突然彼女は交通事故に遭ってこの世を去らねばならなくなったのです。一人息子の健君を残して…。

彼女は健君を残して逝ったことが心残りで、ずっと浮遊霊として健君のそばをさまよっていたといいます。そんな健君が成長して結婚し、男の子をもうけました。その子が3才となった今、彼女は健君とその息子の区別がつかなくなり、「健が私以外の女を母親だと思うようになってしまった」と悲しむようになりました。そして、母子二人の思い出が詰まったこの公園の地縛霊となり、遊びに来る子にちょっかいを出していたというわけです。 「貴女の息子の健君は立派に成人して親になりました。これからはあの世で息子家族を見守ってあげてください」と私は必死に念じました。

彼女はまたすすり泣き、こんなことを頼んできたのです。「あの世へ行く前に、今の健の心の中を教えてください。私のことを覚えているのか、忘れてしまったのか、知りたいんです」そこで、私は健君の心を霊視しました。すると、毎日毎日朝目覚めたら心の中で「お母さん、おはよう」、出勤前には「お母さん、行ってきます」、寝る前には「お母さん、お休みなさい」と語りかけているのがわかったのです。その他にも、何事かあるたびに心の中で母に話しかけ、折に触れて一緒に過ごした日々を思い出しているのもわかりました。

そのことを告げると、女性の霊は嗚咽をもらした後、笑顔であの世へ旅立っていったのです。

子を思う母の心は何よりも深いもの。子供がいくつになっても、親になっても、かわいいかわいい自分の宝。 その宝を残して逝くのはどんなに心残りだったことでしょう。大勢の親子を怖い目に遭わせはしたけれど、私は今回の霊に怒りは露ほども感じられませんでした。 後日Tさんからまたお電話がありました。公園で遊ぶ親子みんなで、公園に花を供えることにしたといいます。そして、それ以来公園で異変は起こらなくなったとのことでした。

尼子の百物語 / 第三話「子を残した女性がすすり泣く」