陸奥国の神秘・電話占い
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尼子の百物語

第二十四話「叔父の遺品の置時計」

一ヵ月ほど前に親戚の方にご不幸があったというひかりさん(仮名)からお電話を受けました。お亡くなりになったのは叔父にあたる方だったそうですが、とても変わり者で、知人や友人も少なく、最期は部屋でひとり孤独死。発見された時には死後数日が経過していたとのことです。親戚一同で葬儀をあげ、その後ひかりさんも含めた数名で叔父様の部屋を片付けたそうですが、その日以降、叔父様がたびたび夢に出てくるようになった、とのことでした。

私はひかりさんの鑑定の電話を受けた時から、霊的な気配を感じておりました。お話を伺いながら霊視を進めると、親族縁で結ばれた方の霊体のようで、ひかりさんに憑依しているのが叔父様の霊であることは明白でした。しかし、無念や恨みなど負のエネルギーは感じられず、別の何かを訴えかけているような意思を読み取ることができました。

そこで、私はイタコの霊術を用い、ひかりさんに憑依している叔父様の霊をこちらに降ろし、霊体交信を試みました。叔父様は私が霊降ろしを生業とする巫女であることを理解し、自らの意図を伝えるため、すぐに“こちら側”へいらっしゃって下さいました。叔父様の霊は、私のほうにやってくるや否や、堰を切ったように自らの意思を伝え始めました。「親族にはとても迷惑をかけたと思っている」「申し訳なかった」まずそう告げてこられました。続いて「ひとつだけお願い事がある。ひかりへ伝えて欲しい」とおっしゃったのです。それはひかりさんが遺品整理の際にもらってきた物にまつわることでした。「ひかりは私の部屋から小さな置時計を持っていったはず。その時計を開けて、中に入っているものを私の墓に入れて欲しい」とのことでした。私は霊降ろしを生業とする巫女であり、故人の旨は必ず伝える、と叔父様の霊に告げると、大変満足した様子で、そのまま帰っていきました。

その後、ひかりさんにありのままを伝えました。迷惑をかけて申し訳なく思っていることを告げると「本当ですよね。でも小さい頃に何度か遊んでもらった記憶があるし、気にしていません」とおっしゃっていました。続いて、叔父様のお願い事を伝えると、大変びっくりして「はい、確かに叔父の部屋から小さな置時計をもらってきました。ひとつくらい思い出の品が欲しかったしアンティーク調で可愛かったので。その中に何かが入っていて、叔父はそれを墓に入れて欲しい、と言っていたのですね?」そう言うと、ひかりさんは電話の向こうでガサゴソと音を立て始めました。「時計は今ここにあります。あっ、裏側に取っ手がついていました。開けてみます」ひかりさんが取っ手を開くと、中には古い一枚の写真が入っていました。フィルムカメラで撮影した写真で、かなり色あせていたそうですが、そこには叔父様がひとりの女性と一緒に写っていたそうです。どこかの観光地で記念撮影をしたような写真で、ふたりは恋人同士のように仲睦まじく手を繋いで映っていました。「私は知らない方ですが、むかし叔父と恋人だった方なのかもしれません。わかりました。それが叔父の遺志であるというのなら、お墓に入れておきます。ありがとうございました」そうおっしゃって、ひかりさんの鑑定は終了しました。

その二週間ほど後、尼子の受付にご報告のお便りが届きました。ひかりさんは鑑定の翌日、すぐに例の古い写真を持って叔父様のお墓へ行き、骨壺のそばに入れたそうです。するとその夜、叔父様がまた夢に出てきました。ひかりさんに向かってニッコリ笑ってお辞儀をして、そのまま歩いていったそうです。「それ以来、叔父が夢に出てくることはなくなりました。未練がなくなったのでしょう。本当によかったです。叔父もあの世で喜んでいることでしょう。大変お世話になりました」お便りにはそう綴られていました。

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